プログラミング作業の開始前にフローチャートを作成する主な目的は、処理のアルゴリズムを明確化し、検証することにあります。システムが実行すべき処理の手順や条件分岐を事前に図式化することで、開発者の思考を整理し、論理的な矛盾や考慮漏れを早期に発見することが可能です。
複雑な要件を扱う場合、いきなりコードを書き始めると、全体の構造を見失ったり、非効率な処理順序になったりすることがあります。フローチャートを用いてまず全体の骨格を設計することで、最も効率的で正確な処理の流れを検討する土台が整うのです。これは、家を建てる前に詳細な設計図を用意するプロセスと似ています。
また、フローチャートは仕様の明確化という目的も担います。顧客やプロジェクトマネージャーから提示される要求仕様は、時に曖昧さを含む場合があるでしょう。その要求をフローチャートという具体的な処理の流れに落とし込むことで、仕様の解釈に間違いがないか、関係者間での認識齟齬がないかを確認する客観的な資料となります。
品質の担保も重要な目的の一つです。フローチャートの段階で論理的な欠陥や異常系処理(エラー発生時の対応など)の考慮漏れを発見できれば、それはコーディング後のデバッグ(バグ修正)作業のコストを大幅に削減することを意味します。プログラムが複雑になるほど、後の工程での修正は困難さを増すため、設計段階での品質向上が求められます。このように、フローチャートはプログラムの品質を初期段階で確保するための重要な設計文書として機能します。